隣の空き家から庭木が伸びてきて困っているんですが、何から調べればいいかわかりません…
まずはこの記事で全体像を把握しましょう。あなたに合った解決策が見つかります。
この記事は全6記事シリーズの第1弾です。
【全6記事の構成】
記事1:基礎知識・結論編(←今ここ)
記事2:自己負担での切除の実践方法
記事3:自治体の活用方法
記事4:所有者の特定・交渉
記事5:かかった費用を所有者に払ってもらうには
記事6:Q&A・まとめ
まず全体像を把握して、あなたに合った解決策を見つけましょう。
第1章: 【結論】まず何をすべきか
あなたに合った3つのルート
隣の空き家から伸びてきた庭木への対処法は、状況によって3つのルートがあります。

【ルート1】自分で費用を負担し切除する方法
所要期間:2週間〜1ヶ月
費用目安:3万円〜数十万円
推奨ケース:被害が進行中、所有者不明
詳しくは→記事2で解説
【ルート2】自治体を活用する方法

所要期間:1ヶ月〜3ヶ月
費用目安:無料(相談・指導のみ)
推奨ケース:危険度が高い、公道にも越境
詳しくは→記事3で解説
【ルート3】所有者を特定して交渉

所要期間:3ヶ月〜6ヶ月
費用目安:5万円〜30万円(弁護士費用含む)
推奨ケース:賠償請求したい、恒久的解決を望む
詳しくは→記事4で解説
この記事では、どのルートを選ぶべきか判断するための基礎知識をお伝えします。
まず確認すべき3つのポイント
どのルートを選ぶにしても、まず以下を確認してください。
1. 越境の証拠を残す
庭木が境界を越えている状況を記録します。
メジャーで測った越境幅(数値が見えるように)
枝が建物に接触・損傷させている状況
全体像(隣家と自宅の関係がわかるもの)
最低10枚、できれば20枚以上撮影しましょう。
動画も有効です。風で枝が揺れて屋根を叩く様子など、静止画では伝わらない被害状況を記録できます。

2. 被害の有無を記録
越境だけでなく、実際の被害も記録します。
雨樋の詰まり・破損
日照被害(室内の明るさ、洗濯物が乾かないなど)
落ち葉の堆積状況
これらを写真とメモで詳細に記録してください。日付入りの写真が望ましいでしょう。
3. 隣家の状況を把握
空き家かどうか、以下で確認します。
電気メーターは動いているか(夜間に確認)
ガスメーターの検針票は古いままか
雨戸やカーテンは閉まったままか
庭の雑草の状態(手入れの形跡があるか)
たまに人が来ている様子があれば、完全な空き家ではありません。その場合は所有者との交渉ルートを検討すべきでしょう。
注意事項証拠がないまま切除してしまうと、後から「勝手に切った」とトラブルになる可能性があります。
必ず事前に記録を残しましょう。特に境界の位置は重要です。
緊急度で判断する
ルート選びに迷ったら、被害の緊急度で判断するのが現実的でしょう。
今すぐ対処が必要(ルート1)
強風で枝が屋根を叩いている
台風シーズンが近い
すでに雨樋が破損している
→記事2:自己切除編へ
1〜3ヶ月の猶予あり(ルート2)
公道にも越境していて通行に支障
隣近所も困っている
自治体の指導で改善する可能性がある
→記事3:自治体活用編へ
時間をかけて解決したい(ルート3)
すでに被害が出ていて賠償請求したい
恒久的な解決(伐採・更地化)を求める
費用と時間をかけられる
→記事4:所有者交渉編へ
次の第2章では、2023年民法改正で何が変わったのかを詳しく見ていきます。
この改正を知らないと、古い情報に振り回されて対処を誤る可能性があります。
第2章: 2023年民法改正で何が変わったか

ネットで調べたら「所有者の許可なく切ると違法」って書いてあったんですが…
それは改正前の情報ですね。2023年4月の民法改正で、一定の条件下では所有者の許可なく切除できるようになりました。
改正前は「泣き寝入り」が当たり前だった。
2023年3月まで、越境してきた庭木を勝手に切ることはできませんでした。
民法233条1項(改正前)には、こう書かれていました。
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
「切除させることができる」という表現がポイントです。
これは「自分で切る」ことではなく、「所有者に切らせる」ことを意味します。
つまり、必ず所有者の協力が必要だったのです。
改正前の実態
空き家の所有者はどこにいるかわからない。 連絡先も不明。 相続でもめていて誰が所有者かすら確定していない。
こうしたケースでは、被害を受けている側が何もできませんでした。
庭木の越境ごときで、そこまでコストをかけられる人は少ないでしょう。
結果として、多くの人が泣き寝入りしていました。
新ルール3つのポイント

2023年4月1日に施行された改正民法では、以下の場合に自分で切除できるようになりました。
1. 所有者に催告したが応じない場合
「○月○日までに切除してください」と催告したのに、相手が対応しない。
この場合は、相当の期間(通常2週間〜1ヶ月)経過後に自分で切除できます。
催告は内容証明郵便で行うのが確実です。費用は1,500円程度でしょう。
具体的な催告の方法は、記事4で詳しく解説します。
2. 所有者を知ることができない場合
これが今回の改正で最も重要なポイントです。
空き家で所有者不明、相続人も特定できない。こうした場合は催告なしで切除可能になりました。
ただし「知ることができない」の判断基準には注意が必要です。
現地での確認(郵便物、人の出入り)
近隣住民への聞き取り(可能な範囲で)
これらを「やった」と言えるだけの記録があれば、「知ることができない」と判断できる可能性が高まります。
具体的な切除手順は記事2で解説します。
3. 急迫の事情がある場合
台風が近づいている、今にも倒れそう、といった緊急時は即座に切除できます。
地震で傾いた木が隣家に倒れかかっている
大雪で枝が折れかけている
これらの場合、所有者の許可を待っていたら被害が拡大します。
民法はそうした緊急避難的な切除を認めたわけです。
条文の正確な理解
改正後の民法233条3項を確認しておきましょう。
この条文の「できる」は、権利として認められているという意味です。

つまり、上記3つのいずれかに該当すれば、法的に正当な行為として切除できるわけです。
「知ることができない」の判断基準
ここが実務上の最大のポイントです。
「所有者を知ることができない」とは、どの程度調査すれば認められるのか?
法務省の解釈では、以下のような調査が期待されています。

現地での確認
近隣住民への聞き取り
望ましい調査
住民票・戸籍の調査(ただし本籍地不明なら困難)
固定資産税の納税者情報照会(自治体によっては対応)
所有者を戸籍から追跡する詳しい方法は、記事4で解説します。
注意事項「知ることができない」の判断基準は明確ではありません。
安易に判断して切除すると、後から所有者が現れて「調査不足だ」とクレームをつけられるリスクがあります。
可能な限り弁護士に相談してから実施することを推奨します。
改正の実務的インパクト
この改正、不動産業界では「画期的」と評価されています。
なぜなら、空き家問題の最大のネックが「所有者不明」だったからです。
従来は所有者を特定するだけで、弁護士費用が数十万円かかっていました。
しかも特定できても、相続人が「私は相続放棄した」「他の相続人に言ってくれ」と責任のなすりあいになるケースも多かったのです。
改正後は、合理的な範囲で調査して「知ることができない」と判断できれば、その手続きをスキップできます。
被害者にとっては大きな前進と言えるでしょう。
「根」は今も自由に切れる
一つ覚えておくべきことがあります。
今回の改正は「枝」についてのみで、「根」は改正前から自分で切除できました(民法233条4項)。
隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

根が越境してきて、自宅の基礎を傷めている場合は、所有者の許可なく自由に切除できます。
枝よりも根の方が、実は自由度が高いのです。
この違いは、枝を切ると樹木全体に影響するのに対し、根は部分的な切除が可能という理屈から来ています。
根は地中で広がっているため、一部を切っても樹木は生き続けることが多いからです。
この記事のまとめ
所有者を知ることができない→自分で切除可能
急迫の事情がある→自分で切除可能
次に読むべき記事
あなたの状況に合わせて、以下の記事に進んでください。
今すぐ切除したい方 → 記事2:空き家の越境庭木を自分で切除する方法
費用をかけずに解決したい方 → 記事3:空き家の越境庭木、自治体(市役所)に相談する方法
所有者を見つけて費用請求したい方 → 記事4:空き家の所有者を戸籍から特定して交渉する方法
費用回収が現実的か知りたい方 → 記事5:かかった費用を所有者に払ってもらうには
よくある質問を確認したい方 → 記事6:空き家庭木越境トラブル完全ガイド【Q&A・まとめ】