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【空き家問題3】越境庭木のトラブルを自治体に相談する方法【空家法の活用】

この記事の位置づけ

この記事は「空き家庭木越境トラブル解決シリーズ」の第3弾です。

前回までのおさらい
記事1:2023年民法改正の解説と3つのルート
記事2:自己切除の具体的手順(費用3〜10万円、期間2週間〜1ヶ月)

→ 記事1:基礎知識・結論編 → 記事2:自己切除実践編

この記事では、自治体(市役所)を活用する方法を解説します。

この記事でわかること
自治体ができること・できないこと
空き家対策部門の役割と権限
効果的な相談の仕方
自治体の対応パターンと現実
代執行の可能性とハードル
こんな人におすすめ
費用をかけずに解決したい
公道にも越境していて危険
近隣住民も困っている
行政の力を借りたい
時間的な余裕がある(1〜3ヶ月)

第4章: 自治体を活用する方法

自分で切除するのは不安です。市役所に相談したら何とかしてくれませんか?

自治体には空き家対策部門があります。ただし「代わりに切ってくれる」わけではありません。できることとできないことを理解しておきましょう。

自治体ができること・できないこと

まず現実を知っておく必要があります。

期待値を正しく設定することが、がっかりしないための第一歩です。

自治体ができること

1. 所有者への指導・勧告

固定資産税のデータから所有者を特定し、「適正に管理してください」と文書で指導します。

これは自治体の大きな強みです。あなた個人では調べられない所有者情報にアクセスできます。

2. 所有者情報の調査

登記簿だけではわからない情報も、自治体なら調べられます。

・固定資産税の納税者
・住民票の異動履歴
・相続人の情報(限定的)

ただし、個人情報保護の観点から、あなたに直接教えてくれるわけではありません。自治体が所有者に連絡するという形になります。

3. 近隣住民との調整

複数の住民から苦情が出ている場合、自治体が間に入って調整してくれることがあります。

「町内会と一緒に所有者と話し合いの場を設ける」といった対応です。

4. 法的手続きのアドバイス

「どう対処すべきか」「弁護士に相談すべきか」など、一般的なアドバイスをもらえます。

ただし、具体的な法律相談は弁護士の領域なので、踏み込んだアドバイスは期待できません。

自治体ができないこと

1. 代わりに切除してくれる(原則として)

「市役所が代わりに切ってください」という要望には応えられません。

私有財産への介入には限界があるからです。

例外的に「代執行」という制度がありますが、後述する通り極めてハードルが高いです。

2. 費用を負担してくれる

切除費用を自治体が負担することは、原則ありません。

一部の自治体で「補助金制度」がある程度です(後述)。

3. 即座に解決してくれる

自治体の対応には時間がかかります。

相談→調査→指導→勧告という手順を踏むため、最低でも1〜3ヶ月はかかります

「今週中に何とかしてくれ」という要望には応えられません。

空家法と自治体の権限

2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」が施行されました。

これにより、全国の市区町村に空き家対策の体制が整備されています。

空家法の主な内容

1. 実態調査

自治体が空き家の実態を調査する権限を持ちます。

外観だけでなく、必要なら立ち入り調査も可能です(所有者の同意が必要)。

2. データベース化

空き家の情報をデータベース化し、所有者や状態を管理します。

あなたが相談すれば、このデータベースを参照して対応してくれます。

3. 特定空家の認定

危険な空き家を「特定空家」に認定できます。

特定空家に認定されると、以下の措置が可能になります。

・助言・指導
・勧告(固定資産税の優遇措置が外れる)
・命令(従わないと50万円以下の過料)
・代執行(自治体が強制的に対処)

ただし、庭木の越境だけで特定空家に認定されることは稀です。

4. 固定資産税情報の利用

従来は個人情報保護で使えなかった固定資産税情報を、空き家対策に限り利用できます。

これにより、所有者の特定が容易になりました。

空家法の限界

空家法は「危険な空き家」を想定しています。

庭木の越境程度では、法律の想定する「危険」には該当しないことが多いです。

ただし、以下のような場合は対象になり得ます。

・庭木が倒れそうで、通行人に危険
・公道にも越境していて、交通に支障
・建物自体も危険な状態

相談前の準備

自治体に相談する前に、以下を準備しましょう。

効果的に相談するための準備です。

1. 証拠資料の整理

記事1で解説した証拠をまとめます。

必要な証拠
・越境状況の写真(10枚以上)
・被害状況の写真(屋根の傷、雨樋の詰まりなど)
・隣家の空き家状態がわかる写真(郵便物、雑草)
・位置関係がわかる地図(Google Mapを印刷したものでも可)
・被害の時系列(いつから越境、いつ被害発生)

これらをクリアファイルにまとめておくと、相談時にスムーズです。

2. 隣家の情報収集

わかる範囲で構いません。

集めるべき情報
・住所(地番):正確な地番を確認
・登記簿謄本:取得していれば持参
・いつ頃から空き家か:「5年前から誰も住んでいない」など
・近隣住民の証言:「10年前に所有者が亡くなった」など

近隣住民に聞き込みするのも有効です。「昔は誰が住んでいたか」「いつ頃から空き家か」といった情報が集まります。

3. 相談内容の整理

メモにまとめておきましょう。

整理すべき内容
・いつから越境しているか
・どんな被害があるか(金額も)
・自分で対処を試みたか(業者に見積もりを取ったなど)
・自治体に何を期待するか(指導? 所有者情報の提供? 代執行?)

感情的にならず、事実を淡々と伝えることが重要です。

4. 他の被害者の確認

同じ空き家で困っている人が他にもいないか確認しましょう。

複数の住民から相談があると、自治体は優先的に動きます。

近所の人に「あなたも困っていませんか?」と声をかけてみてください。

効果的な相談の仕方

自治体の窓口では、以下のように伝えると効果的です。

どこに相談するか

主な相談先
・空き家対策課(空家対策室、住宅課など)
・環境課(不法投棄、衛生害虫の場合)
・市民相談室(総合窓口)

自治体によって名称が違うので、まず総合案内で「空き家の相談」と伝えれば、担当部署を教えてもらえます。

伝えるべきポイント

ポイント1: 具体的な被害を強調

「枝が伸びている」だけでなく、「屋根に接触して傷がついた」「雨樋が詰まって雨漏りした」など、実害を伝えます。

悪い例
「隣の庭木が邪魔です」
良い例
「隣の空き家から伸びた庭木が、私の家の屋根に接触し、瓦が3枚割れました。修理費用の見積もりは8万円です」

具体的な金額を示すことで、深刻さが伝わります

ポイント2: 写真を見せる

口頭説明だけでなく、写真を見せることで説得力が増します。

タブレットやスマホで見せるより、印刷した写真の方が担当者が見やすいです。

A4サイズに4〜6枚の写真を配置して印刷しましょう。

ポイント3: 近隣の状況も伝える

「他の隣家も困っている」「公道にも越境している」といった情報は、自治体が動く理由になります。

効果的な伝え方
「この空き家は、うちだけでなく反対側の家も庭木で困っています。また、公道にも枝が出ていて、通学路なので子どもたちが危ないです」

公共性を訴えることで、優先度が上がります。

ポイント4: 協力姿勢を示す

「自分でも調べてみましたが所有者がわかりません」と、丸投げではない姿勢を見せましょう。

効果的な伝え方
「登記簿謄本を取得して確認しましたが、所有者の住所が古くて連絡が取れませんでした。自治体で所有者を調べていただけませんか?」

自分でできることはやった、という姿勢が大切です。

相談時のNGワード

以下のような言い方は、担当者の心証を悪くします。

NGワード集
・「市が代わりに切ってください」→権限がありません
・「税金で何とかしてください」→私有財産への介入には限界があります
・「すぐに解決してください」→手続きには時間がかかります
・「あなたたちの仕事でしょ」→感情的な物言いは逆効果

冷静に、具体的に、協力的に伝えることを心がけましょう

自治体の対応パターン

相談後、自治体は以下のような対応を取ります。

パターン1: 所有者への指導

最も一般的な対応です。

手順
1. 固定資産税のデータから所有者を特定
2. 所有者に「適正管理のお願い」を文書で送付
3. 電話でも連絡を試みる
4. 反応があれば、指導内容を伝える
指導文書の内容例

○○様

前略 日頃より市政にご協力いただき、ありがとうございます。

貴殿が所有されている下記物件について、近隣住民より「庭木が越境している」との相談がございました。

つきましては、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、適正に管理していただくようお願い申し上げます。

○月○日までに、対応状況をご報告ください。

物件の表示:○○市○○町○丁目○番○号

草々

これで所有者が対応してくれれば、費用負担なく解決します。

成功率
自治体の指導で解決するケースは、約30〜40%と言われています(国交省調査)。

ただし、指導に強制力はありません。無視されることも多いのが実情です。

パターン2: 特定空家への認定

庭木の越境だけでなく、建物自体が危険な状態なら「特定空家」に認定される可能性があります。

特定空家の認定基準
以下のいずれかに該当する場合です(空家法に基づくガイドライン)。

1. 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・建物が傾いている
・基礎が腐食している
・屋根や外壁が崩れている

2. 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・ゴミの不法投棄
・ネズミ・害虫の発生
・悪臭の発生

3. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・門扉や塀が崩れている
・雑草が2メートル以上伸びている
・ゴミが散乱している

4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
・不審者の出入り
・放火のリスク
・樹木の枝が道路に大きく張り出している

庭木の越境は、4番目の基準に該当する可能性があります。

ただし、「著しく」という要件があるため、軽微な越境では認定されません。

特定空家になると

認定されると、自治体は以下の措置を取れます。

ステップ1: 助言・指導

「特定空家に認定しました。改善してください」と通知します。

ステップ2: 勧告

指導に応じない場合、勧告を行います。

勧告を受けると、固定資産税の優遇措置(住宅用地の特例)が外れます

固定資産税の負担増
・優遇措置あり:固定資産税が1/6(200㎡まで)
・優遇措置なし:6倍に増額

これは所有者にとって大きな痛手です。多くの場合、この段階で対応します。

ステップ3: 命令

勧告にも応じない場合、命令を発します。

命令に違反すると、50万円以下の過料(行政罰)です。

ステップ4: 代執行

命令にも従わない場合、自治体が強制的に対処します(後述)。

パターン3: 調整役としての関与

所有者と被害者の間に入って、話し合いの場を設けてくれることもあります。

調整会議の例
・参加者:所有者、被害者、自治体職員、町内会長
・場所:市役所の会議室
・議題:庭木の切除方法、費用負担

第三者(行政)が入ることで、話が進みやすくなる効果があります。

感情的になりがちな当事者同士より、冷静に話し合えます。

自治体が動きやすいケース

以下のような場合、自治体は積極的に動いてくれる傾向があります。

動きやすいケース

1. 公道にも越境していて通行に支障

私道ではなく、公道(市道・県道など)に越境している場合、自治体の管理責任が関わります。

「道路管理者として放置できない」という理屈で動きやすいです。

2. 複数の隣家が被害を受けている

一軒だけでなく、周辺複数の家が困っている場合、「地域の問題」として優先度が上がります。

3. 建物自体も危険な状態

庭木だけでなく、建物も倒壊寸前、といった場合は特定空家認定のハードルが下がります。

4. 地域の景観を著しく損なっている

観光地や住宅地で、明らかに景観を損ねている場合、自治体の景観政策として動く可能性があります。

5. メディアで取り上げられそうな案件

「こんな危険な空き家を市は放置している」と報道されると、自治体はイメージダウンです。

「新聞に投書しようか考えています」と伝えると(脅しではなく事実として)、対応が早まることがあります。

動きにくいケース

逆に、以下の場合は優先順位が下がります。

・一軒だけの庭木トラブル
・被害が軽微(「日当たりが悪い」程度)
・私道のみの越境(公共性が低い)
・所有者が明確で連絡可能(民事で解決すべき)

その場合は、近隣住民と連携して「地域の問題」として相談すると効果的です。

代執行の現実

「自治体が代わりに切除してくれる」という代執行に期待する人もいますが、現実は厳しいです。

代執行のハードル

代執行が行われるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

代執行の条件
条件1: 特定空家に認定されている
まず特定空家でなければ、代執行の対象になりません。

条件2: 助言・指導・勧告・命令をすべて経ている
いきなり代執行はできません。段階を踏む必要があります。
各段階で、所有者に猶予期間(通常1〜3ヶ月)を与えます。
つまり、最短でも半年以上かかります。

条件3: 所有者が命令に従わない
命令を無視した場合のみ、代執行が可能になります。

条件4: 著しく危険または緊急性が高い
庭木の越境程度では、「著しく危険」とは認められません。

代執行が行われる例
・建物が倒壊寸前で、隣家や道路に倒れる危険
・台風で屋根が飛びそう
・不審火が相次いでいる

代執行の実績

全国で年間10〜20件程度(2023年度、国交省調査)。

そのほとんどが「建物の解体」であり、庭木の切除での代執行はほぼゼロです。

代執行の費用

仮に代執行されても、費用は所有者に請求されます。

つまり、被害者の負担がゼロになるわけではありません。

費用の流れ
1. 自治体が業者に費用を支払う(立て替え)
2. 所有者に費用を請求
3. 所有者が支払わない場合、税金として徴収(強制徴収)

ただし、所有者が無資力の場合、回収できないこともあります。

その場合、自治体(つまり税金)が負担することになるため、自治体は代執行に慎重です。

補助金制度のある自治体

一部の自治体では、空き家の管理や解体に補助金を出しています。

庭木の剪定にも使える場合があります。

補助金の例

東京都A区の例
・空き家の樹木剪定:費用の1/2補助(上限5万円)
・対象:特定空家または空家法に基づく指導を受けた物件
・申請者:所有者または近隣住民
B市の例
・危険樹木の除去:費用の2/3補助(上限10万円)
・対象:公道に越境し、通行に支障がある樹木
・申請者:所有者のみ
注意点
自治体によって制度の有無、内容、対象者が大きく異なります。

あなたの自治体にも制度があるか、空き家対策部門に確認しましょう。

ただし、多くの場合「所有者向け」の補助金であり、被害者が直接もらえるわけではありません。

自治体活用のメリット・デメリット

メリット

1. 費用がかからない

相談自体は無料です。

指導で解決すれば、あなたの費用負担はゼロです。

2. 所有者情報を調べてもらえる

固定資産税のデータにアクセスできるのは自治体の強みです。

あなた個人では調べられない情報を持っています。

3. 行政からの指導は所有者に響きやすい

個人からの要望より、行政からの指導の方が所有者は真剣に受け止めます。

「市役所から手紙が来た」というインパクトは大きいです。

4. 近隣全体の問題として扱ってもらえる

あなた一人の問題ではなく、地域の問題として対応してもらえます。

デメリット

1. 時間がかかる

相談→調査→指導→勧告という手順を踏むため、最低でも1〜3ヶ月かかります。

緊急性が高い場合は不向きです。

2. 強制力がない(原則として)

指導・勧告には強制力がありません。

所有者が無視すれば、それ以上は進みません。

3. 代執行は期待できない

庭木の越境程度では、代執行はほぼ行われません。

期待しすぎないことが重要です。

4. 担当者の熱意に左右される

自治体や担当者によって、対応の温度差があります。

積極的な担当者もいれば、「民事不介入」を理由に消極的な担当者もいます。

自治体が動かない場合の次の一手

自治体に相談したが、あまり動いてくれない場合、以下の選択肢があります。

選択肢1: 議員に相談

地方議員(市議会議員、県議会議員)に相談すると、自治体に圧力をかけてもらえることがあります。

議員は選挙で選ばれるので、有権者の声に敏感です。

選択肢2: 自己切除に切り替え

自治体が動かないなら、記事2で解説した自己切除を検討しましょう。

「自治体に相談したが解決しなかった」という記録は、後々「や

小沼克年

小沼克年

【報道記者の経験も‼硬派な編集者】株式会社エスバー(井越企画)専務|井越企画の立ち上げメンバー|造園現場の経験も豊富|20代の頃からwebメディア企画(福祉サービス業、キッチンカー、メンズ美容ブランド)に従事|趣味はホームパーティー、スニーカー収集、DIY

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